現代人で矯正治療が必要な人は、親知らずがきれいに生える場所はないと言い切ってもよいでしょう。
矯正が終わった後に親知らずを残したままにしておくと、せっかくきれいになった歯並びが崩れることがあるため、当院では矯正前か矯正中の抜歯をお勧めすることが多いです。
大人の人は歯の大きさと向きが確定しているので、状態に合わせて抜くかどうかを決めます。
小児や中高生の場合はまだ歯が完成していないことがほとんどですが、レントゲンを撮って明らかにスペースがない場合、下顎の親知らずは早めの抜歯をお勧めすることがあります。一方の上顎は抜かずに様子をみることがほとんどです。
下顎は早く抜いて、上顎は様子をみる理由は以下の通りです。
上顎と下顎 親知らずの違い
下顎親知らずの特徴
・スペースがないと横向きになることが多い
・横向きになると自然に生えてくることはない
・横向きになると手前の歯を押してきて歯並びが悪くなることがある
・横向きになって見えている場合、手前の歯が虫歯になりやすい
・根の形態から移植に利用できる可能性が低い
上顎親知らずの特徴
・スペースがなくても生えてくることが多いため、生えてからの抜歯で対応できる
・矯正治療で手前の7番の代わりに利用できることがある
・根の形態によっては移植に利用できる
親知らずの早期抜歯(歯胚抜歯)の症例
今回のケースは小学4年生です。手前のまだ生えていない7番のスペースがなく手前に傾いています。そこで7番のスペースを確保するため、親知らずの早期抜歯(歯胚抜歯)を行いました。施術時間は、麻酔を効かせる時間も含めて30分程度。傷口も2糸縫う程度の小さいものですみました。デメリットは代謝が活発な若い人は腫れやすいということと、保険適用がないということです。
矯正治療と親知らず抜歯のタイミング
このブログでは、矯正治療が必要な人は基本的には親知らずの抜歯が必要というお話をしました。
状況によっては、早期抜歯も可能ということもお話しました。
ただ、先天性欠如がある場合や虫歯リスクが高い場合などは、慎重な判断が必要です。
親知らずは再生医療に使えるのではないか?という期待もありますが、一般的な治療に利用できるようなるまでにはまだかなりかかると予想されています。
親知らずの早期抜歯は、今ある歯を守るための選択肢の一つになると考えています。
抜歯が必要であれば、抜くタイミングは20代までをお勧めします。
年齢が上がると抜きにくくなり、治癒も遅くなります。特に女性の方は妊娠中、授乳中の抜歯はお勧めできないので、早めに抜いておくことをお勧めします。