歯がたくさんあればしっかり噛めるとは限らない
80歳で20本の歯を残そうという8020(ハチマルニイマル)運動が周知されてきたこともあり、歯の本数を気にされる人が増えてきているように感じます。
8020運動には「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」という願いが込められています。
しかし、ただ単に歯の本数が多ければしっかり噛めるかというと、そうではないこともあります。例えば歯周病で歯が揺れている場合、噛める状態の被せ物が入っていない場合、もともとの噛み合わせが悪い場合などは歯の本数が多くてもしっかり噛めません。
歯を失ってしまったら合う「義歯」を入れる
もちろん自分の天然の歯でしっかり噛めるのが一番ですが、誰もが丈夫な歯ではないので、残念ながら何本も歯を失ってしまう人もおられます。しかし歯を失っても歯の代替となる「義歯」で補うことで、しっかり噛めるようになります。
あごの骨に固定するインプラントはしっかり噛める義歯の代表格ですが、費用や全身的な状態などによっては選択できません。そのような場合で欠損している歯が多い時、歯を入れる方法は入れ歯になります。入れ歯と聞くと「しっかり噛めるの?」とか「見た目は大丈夫なの?」と不安になる人もおられますが、しっかり合った入れ歯は何でも食べられますし、見た目に関しても設計や材質次第で自然な歯に仕上げることができます。
入れ歯が合わない原因
入れ歯を使っている知り合いや身内がしっかり噛めないと言っているというお話もよく聞きます。入れ歯自体が合っていないこともありますが、それ以外の理由があることも多いです。
・揺れている歯がある
・倒れ込んだり伸びたりしている歯がある
部分入れ歯の場合、残っている歯にクラスプという部品をかけて固定します。しかし、その歯が揺れていたり、位置が悪いと、噛んだ時に入れ歯が動き、歯ぐきにすれて痛い、しっかり噛めないということになります。
・不正咬合がある(総入れ歯の場合、歯がある時に不正咬合だった)
受け口や極度の出っ歯の場合などは、噛み合わせが安定しにくく、外れやすいなどの不調が起こりやすいです。
・遊離端欠損(後方にクラスプをかける歯がない)
最後方の歯がない状態を遊離端(ゆうりたん)といいますが、後方の歯がないと噛んだ時に入れ歯が沈み込み、歯ぐきに痛みが出るなどのトラブルが起こりやすいです。
・若い頃に比べて噛み合わせが下がっている
歯がない状態を放置していた時期があったり、歯周病で歯が揺れていたりすると、噛み合わせが低くなり不安定になります。
・歯ぐきの状態が変わってしまった
入れ歯の下の歯ぐきの状態は、年と共に少しずつ変化があります。同じ入れ歯を長期間使っていると、入れ歯の下の歯ぐきが痩せてきてゆるくなることがあります。
噛める入れ歯をつくるポイント
歯が抜けた部分にそのまま入れ歯を作るだけでは、合わないこともあります。噛める入れ歯を作るのに重要なポイントは以下の2つです。
①残っている歯の状態を整えること
②正しい噛み合わせをつくること
現在入れ歯が合わないと感じられている人は一度お口の中の総合的な治療を検討されるとよいかもしれません。
食べたいものを食べられないのは、栄養面でもマイナスになる上、ストレスがたまり精神的にもよくないです。毎日毎食を楽しむため、しっかり噛める歯をキープしていきたいですね。
写真の症例は治療前には20本以上の歯がありましたが、噛めないことが主訴で治療を開始しました。最終的に上あごは入れ歯になりましたが、見た目もきれいになり、よく噛めるようになったと喜んでくださっています。現在、治療終了から約6年経ちましたが、問題なく経過しています。