歯列矯正で、あごが萎縮して狭い場合「拡大」という方法を併用することがあります。
拡大の方法は数多くありますが、今回は急速拡大についてお話します。
拡大治療のメリット
・歯列弓の形が正常になる(V字型歯列弓→U字型歯列弓)
・口の中の体積が広くなる(呼吸障害の予防)
・抜歯を回避できる可能性が高くなる
急速拡大とは
急速拡大はあごの骨自体を拡大する方法で、上顎の拡大に適用します。
以前は大人への適用は難しかったのですが、現在はTAD(アンカースクリュー)という矯正用のインプラントを用いることで、骨格から拡大することが可能となりました。
一般的な拡大装置は歯を傾斜させて広げますが、急速拡大では、上顎を骨格的に広げることができます。
急速拡大の仕組み
上あごは、子供の頃は左右の骨は別々でくっついていませんが、成長とともに左右の骨が合体してくっついていきます。その合体した継ぎ目を正中口蓋縫合(せいちゅうこうがいほうごう)といいます。
急速拡大では、この正中口蓋縫合を引き離します。引き離した直後は、縫合部分には骨がなく空洞ですが、3〜6ヶ月程度経つと、空洞の部分に骨ができます。そのできた骨の分が拡大量となります。あごの骨ごと拡大するため、後戻りが少ない方法といえます。
小児では、上記の通り左右の骨はつながっていないので、拡大装置のみで広がりますが、大人はくっついた骨を引き離すためにTAD(アンカースクリュー)を左右の骨に固定する必要があります。
急速拡大の例
上あごに固定した装置を、1日に1〜3回程度回すことで広がっていきます。
1、2ヶ月以内には拡大の効果が実感できます。
急速拡大のデメリット
・一時的に前歯にすき間ができる
・発音しにくい
・食べ物が詰まりやすい
・年齢が上がると広がらないことがある
急速拡大が適用になる歯列不正の例
・狭窄歯列(V字型歯列弓)
・受け口
・切端咬合
・叢生
・バッカルコリドーが気になる場合
注)あくまでも一般的な見解ですので、実際は個別に診断が必要になります。
当院では現在、TADを使用した急速拡大にはMSEという装置を使用しています。
中学生以降くらいの子どもさんから大人まで幅広い年齢層に対応可能ですので、ご興味のある方はご相談ください。