根管治療の成功に重要なことは、根管内の細菌を徹底的に排除することです。
また、すでに根管内にいる細菌を取り除くことと平行して、外から細菌を入れないようにすることも必要です。
そこで治療中は唾液の中の細菌が根管内に入らないようラバーダムをかけて治療しますが、歯の残っている部分が歯ぐきギリギリの場合や下にある場合は、まず「隔壁(かくへき)」を設置します。
隔壁の目的
・治療中の辺縁漏洩(へんえんろうえい)の防止
ラバーダムをかけても歯の残っている部分が少ないと、完全な閉鎖ができず、すき間から細菌が侵入してしまいます。(辺縁漏洩)このような場合に隔壁を設置し、歯の高さを確保することで、すき間からの細菌の侵入を防止します。
・治療期間中の仮の詰め物の脱落防止
根管治療は、歯の状態によっては、何回も通院が必要になることがあります。その間に仮の詰め物が脱落すると、せっかく清潔な環境で治療をしてきたことが振り出しに戻ります。ですから、仮の詰め物を脱落させないことも、根管治療の成功に必要な条件になりますが、歯の残っている部分が少なくなればなるほど、取れやすくなります。隔壁には、仮の詰め物の脱落を防止する目的もあります。
・ラバーダムの安定
ラバーダムシートはクランプという器具を歯に固定し、装着しますが、歯の残っている部分が少ないとクランプがかかりません。隔壁を設置することで、クランプの装着が可能になります。
隔壁の手順
・虫歯になっている部分をしっかり削除
虫歯が残っていると、根管治療中に根管内に虫歯菌が移動するため成功率が下がります。根管治療の準備として、まず虫歯を取り残しなく削除することが大切です。当院では、齲蝕検知液の中でも細かい粒子のものを使用し、丁寧に虫歯を削っていきます。
・歯ぐきと歯のすき間を圧排(あっぱい)
残っている歯の部分が歯ぐきよりも下の場合は、歯ぐきを糸で広げて隔壁を入れるスペースを作ります。この操作を圧排といいます。
・コンポジットレジンで隔壁を設置
歯に接着剤をつけて、コンポジットレジンを盛り上げ、光で硬化させます。
・隔壁の調整
盛り上げて硬めたコンポジットレジンをなめらかな面になるよう、磨き上げます。
隔壁のまとめ
根管治療前の一手間を追加することで、根管治療の成功率が上がります。
一つ一つのステップを丁寧に行うことが、歯の寿命を伸ばす秘訣です。