歯科医になって20数年、多くの患者さんのお口の中をみてきましたが、親知らずがきれいに生えている人はめったに見かけません。
現代人と親知らず
学校や職場などの歯科健診でも、親知らずを除く28本の歯がそろっていると正常な歯列という判断をするくらいで、昔と環境が変わった現代人には必要のない歯になってきているようです。
現代人の中でも矯正治療が必要な人は、あごが小さく、親知らずが生える場所はないと断言してもよいくらいです。
最近では、親知らずの1本手前の7番が、スペース不足で横向きになっているケースも見かけるようになってきました。親知らずがあると、7番を矯正で起こすスペースがないため、このようなケースでは親知らずの歯胚抜歯が有効です。
歯胚とは
歯は生えてくる前からあごの骨の中で準備が始まっています。あごの中で作られた歯の卵が歯胚です。歯のもととなる細胞は上皮由来のため、歯胚は最初はやわらかい状態で、少しずつ硬い部分が増えて歯の形になり、準備が整った段階で口の中に生えてきます。
親知らずの歯胚抜歯
小学校中学年頃から、レントゲンで下あごの親知らずの歯胚が確認できるようになります。
初期の頃は、レントゲンでは円形の透過像(黒色)としてみえます。処置時間が短いこと、外科的な負担が少ないことから、この時期の歯胚抜歯はお勧めです。
その後、石灰化が進むとまず歯冠部(最終的に口の中で見える部分)の範囲が広がっていきます。中学生頃になると歯冠はほとんど出来上がっていることが多いです。この時期になると歯冠部の分割が必要になり、歯胚抜歯としては難度が上がりますが、歯根ができていない場合、神経損傷のリスクはほぼありません。
高校生以降は歯根が完成していることも多く、歯胚抜歯ではなく大人と同じ一般的な歯の抜歯となります。
小児の親知らず抜歯のデメリット
・3〜4日程度かなり腫れる
・外科的な処置に対する協力度によっては施術ができない
・保険適用がない