子どもの矯正
Orthodontics for Children
※)資料の写真はすべて院長の担当、施術症例です。実際の治療では個人差があります。
小児矯正への想い
崖っぷちに建てられている家を想像してみてください。
その家の中をどんなにリフォームしても安定することはありません。
小児矯正は、土台となる顎の骨を安定させる治療です。
私は、一般開業医で働くようになった2001年頃から矯正治療に取り組むようになりました。
当初は永久歯の出る場所を作ることに集中しており、取り外し式の装置も多用していましたが、様々な問題に直面し現在は成長発育矯正(顎顔面矯正)で治療を行っています。
歯並びが悪くなっているのは他に原因があるからです。その原因とは「お口の機能が正しく使えていない。」ことです。永久歯のスペースを矯正器具で確保しても、機能が悪いままでは良い状態を維持することはできません。
そして悪い機能をそのまま放置すると、顎の位置のズレや顎の骨の変形につながります。見た目がそれほど悪くなくても、身体の他の部分に症状が出ることすらあります。
成長期で柔軟性のある小児のうちに矯正治療を始めることは、良い歯並びの獲得だけでなく、身体の健康の獲得にもつながります。
子ども達が健やかに成長していくのを見ることは、私たちの喜びです。
矯正治療中は大変なこともありますが、私たちと一緒に乗り越えて、輝く未来を手に入れましょう。
やみか歯科・矯正歯科 院長 山口美華
子どもの歯並びが悪くなる原因
歯並びの悪さは遺伝的なものと思っている人は多いのではないでしょうか。
しかし実際は「口の機能が正しく使えていない」ことが主な原因です。
歯並びに影響する機能的な原因(悪い癖)の例をあげると、以下のようなものがあります。
✔︎口呼吸
✔︎低位舌
✔︎舌の動かし方の悪い癖(舌癖)
✔︎あまり咬まずに食事をする
✔︎指を吸う
✔︎爪を噛む
✔︎唇をかむ
✔︎頬杖をつく
✔︎うつぶせ寝などの睡眠時の姿勢
このような悪い癖を続けていると顎の骨が徐々に変形したり、萎縮してしまいます。その結果として歯並びが悪くなるのです。
「お口ポカン」はやめましょう
特に「口呼吸」と「低位舌」は悪の元凶と言っても過言ではありません。
口呼吸は万病のもと、とも言われており歯並び以外にもさまざまな身体の病気の原因となることが分かっています。
テレビやYoutubeを見ているお子さんのお口、いつもポカンと開いていませんか?「お口ポカン」は病気です。早いうちからの対応が重要です。
小児矯正のメリット、デメリット
小児矯正のメリット
・健康な身体の土台づくりができる
・顎骨の変形を予防できる(顔立ちが整う)
・抜歯矯正を回避できる可能性が高い
・装置の順応性が高い
・悪い癖を改善しやすい
下のケースでは上顎の成長発育矯正を行ったことで、受け口と低位舌が改善しました。小児矯正は、形態と機能両方の改善ができるのが大きなメリットです。
小児矯正のデメリット
・治療期間が長くなる
・保護者の協力が必須
大人の矯正と子どもの矯正の違い
常日頃から、子どもの矯正治療は「育成」大人の矯正治療は「更生」と表現しています。
詳しい内容は当院院長の監修記事をお読みください。
小児矯正の治療例
当院の小児の矯正では、顎の拡大をメインに進めていきます。
永久歯の生える場所ができると、ブラケットをつけなくても歯は正しい場所に並んでくることがほとんどです。
ブラケットをつけずに拡大治療のみで歯並びのガタガタが改善した症例1
ブラケットをつけずに拡大治療のみで歯並びのガタガタが改善した症例2
反対咬合(受け口)が改善した症例
上顎前突(出っ歯)が改善した症例
小児の睡眠時無呼吸症候群
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は寝ている間に上気道が閉塞し、無呼吸や低呼吸を繰り返す病気です。大人の病気と思われがちですが、小児にもみられ、近年有病率が上がってきているとの報告があります。
当院の小児矯正ではあごの骨を積極的に拡大し、OSASの原因である「低位舌」と「小さいあご」の改善をはかります。
小児の睡眠時無呼吸症候群の症状
・毎日いびきをかく
・寝ている時に苦しそうな呼吸をすることがある
・寝ている時に呼吸が数秒間止まることがある
・眠りが浅い
・おねしょをする
・寝ぞうが悪い
・寝起きが悪い
・朝起きた時に喉が乾いている
・日中ぼーっとしていることが多い
・日常的に長時間の昼寝をする
・学校や保育園で居眠りが多い
・集中力がない
・落ち着きがない
・同学年の子どもと比べて成長が遅い
小児の睡眠時無呼吸症候群の原因
・鼻がよくつまる(花粉症などのアレルギー)
・口呼吸
・肥満
・アデノイド肥大
・口蓋扁桃肥大
歯科でできる小児の睡眠時無呼吸症への対応
睡眠時無呼吸症候群は気づきにくいですが、放置すると学力低下やうつ病の発症リスクも上がることが分かっています。
現代の子ども達のあごは以前に比べてどんどん小さくなっています。
歯の矯正でお口の中を広くする治療は、歯並びがよくなるだけでなく、舌根沈下を防ぐ環境を作ることができ、将来的な睡眠時無呼吸症の予防にも有効と考えます。
あごの成長促進ができる矯正治療は小児の頃しかできません。当院では、小児の矯正を5~7歳ごろまでに開始することを推奨しています。
治療開始時6歳の子どもさんのお口の中の変化です。2回の拡大で、お口の中が広くなりました。
歯科における気道検査
当院は、気道の閉塞度を測定できるCTを導入しています。
この機器により、術前、術後の変化を視覚的に確認することができます。
小児矯正(1期治療) 当院での流れ
① カウンセリング(無料)
気になる部分をじっくりお聞きし、年齢、お口の中の状態、お顔などの情報から大まかな治療の方向性をお伝えします。
②検査(別途費用必要)
矯正の診断に必要なセファロをはじめとするレントゲン、写真、模型など必要な検査を行います。
③検査説明
現在の不正咬合がどのような状態のものか、使用する矯正装置がどのようなものか、費用などをご説明いたします。
④矯正装置の型取り→治療開始(1クール目)
※以下の表はよくあるパターンでの例となります。
状態によっては別の装置からのスタートとなることもあります。
⑤2クール目以降
1クール目の装置を一旦外し、数ヶ月間装置のない状態で噛み合わせが安定するのを待ちます。
その後1クール目での治療の成果を評価し、次の装置を使用するか、装置を使用せずしばらく様子をみるかを判断します。
3クール目以降も同じように評価をはさんで次の予定を決めていきます。
装置が入っていない間も、機能訓練は継続して行います。
⑥2期治療の必要性を検討
後方の永久歯(7番)がすべて生えそろい、成長のめどが経った頃に2期治療を行うかを相談して決めていきましょう。
小児矯正 よくあるご質問
Q: 小児矯正の開始時期はいつ頃ですか?
A: 当院では一般的には、5〜7歳頃からの開始を推奨しています。
これは、あごの拡大効果の出やすさと、治療に対する協力度とのバランスを考えた結果の推奨年齢です。それより低年齢であっても、治療を開始した方がよい場合もありますし、逆に年齢が過ぎてしまっている場合は、少しでも早く始めた方がよい治療結果を得る可能性が高まります。
最適な開始時期は、成長度合いや歯並びの状態によっても変わりますので、お子さんの歯並びが気になられる場合はまずは一度ご相談ください。
Q: 小児矯正は何歳までですか?
A: 1期治療としての小児矯正は第二大臼歯が生えるまでの年齢になりますので、概ね12歳~14歳頃です。それ以降は、2期治療としての治療を行います。
Q: 小児矯正の治療期間はどのくらいですか?
A: 歯並びの状態や開始年齢によって変わりますが、少なくとも数年程度は必要になることが多いです。低年齢で開始すると5~6年程度かかる場合もありますが、いずれも装置を使い続けるわけではなく、噛み合わせの安定を待つ期間や永久歯の生え変わりを待つ期間が含まれた期間となります。
Q: 急速拡大は鼻が広がると聞きましたがどうですか?
A: 急速拡大装置は、鼻の横から目の下までつながった上顎骨を骨ごと広げる拡大装置です。
拡大と共に鼻腔が広がり、鼻呼吸がしやすくなるというメリットがありますが、一時的に鼻が横に広がることがあります。これはスクリューを積極的に巻く期間が終わると徐々によくなり、最終的にはもと通りか、もとより良い状態になります。
広がった鼻が戻るのにかかる期間は、これまでの臨床経験上の感覚としては1年から2年程度です。
Q: 矯正治療中は虫歯になりやすいと聞きましたが本当ですか?
A: 装置が入ると今までよりも磨きにくくなるので、歯ブラシ以外の補助清掃用具の使用が推奨されます。使用する用具や使用方法は、矯正装置が入った日にご説明させていただきます。
また小児の場合、一つの装置を半年程度の短期間しか使用しないため、大人の矯正に比べて虫歯になるリスクは低いといえます。
Q: 小児矯正をしても後戻りをすると聞いたのですが本当ですか?
A: 当院で行う小児矯正は基本的に歯1本1本を並べるのではなく、土台となる骨格にアプローチする治療法です。
そしてお口の機能を正しく使えていないことが、小児の不正咬合には大きく関わっているため、当院では、矯正装置の使用と並行して機能訓練を行います。正しい機能を獲得していくと、骨格から広げたスペースはリテーナーを使用せずとも確保されていきます。
逆に正しい機能を継続できないと、その後よい発育ができず、結果的に後戻りと言われる状態になるのだと考えられます。
ただし、遺伝的に受け口の傾向が強い場合は、思春期の下顎の成長スパートの時期に状態が一気に悪化することもあります。これは、後戻りではなく過成長となりますので、2期治療で適切な対応をしていく必要があります。
Q: 小児矯正と大人の矯正 費用はどのくらいの差がありますか?
A: 大人の全体矯正は方法によって差がありますが、総額で概ね100万円前後になることが多いようです。
一方の小児の矯正は、10万円〜70万円程度と大きな差があります。使用する装置の違いや治療期間などにより、このような差が出るのだと予想されます。子どもさんの歯並びや年齢などによって最適な方法は変わりますので、費用の安さだけでなく内容をしっかり確認することが重要です。
また1期治療のみしか対応していない医院もあるので、最終的にいつまで対応してもらえるのかを確認しておいた方がよいでしょう。
2期治療まで対応している医院では、同じ医院で1期治療を受けた場合、2期治療の割引がある場合も多く、最終的に1期、2期の費用総額が大人の矯正と同じくらいになることが多いです。
費用はとても気になる部分ですが、成長期の今しかできないことがあります。迷っているうちに子どもさんはどんどん成長します。
まずは一度相談に行って、直接話を聞いてみられるとよいでしょう。
当院の小児矯正の費用
小児矯正は何歳から治療を始めたらよいのでしょう?
当院では5〜7歳頃からの開始を推奨しています。
子どもさんの成長度合いや歯並びの種類によって変わりますが、特に次のような歯並びの場合は早めの治療をお勧めしています。
小児矯正 早めに治療を開始した方がよい不正咬合の例
・交叉咬合(こうさこうごう)
複数の歯の噛み合わせが上下で反対になっている状態です。上顎と下顎の真ん中がずれていることが多いです。放置すると顎のゆがみにつながり、将来手術が必要になることもあり、早めの治療開始が推奨されます。
・反対咬合(受け口)
噛み合わせた時に下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態です。思春期に下顎の成長が旺盛になると、状態が悪化し手術が必要になることもあるため、早めの治療開始が推奨されます。
・過蓋咬合(かがいこうごう)
噛み合わせた時に下の前歯が上の前歯に隠れてほとんど見えないか全く見えない状態です。下顎が小さいことが多く睡眠時無呼吸症候群のリスクが上がることや顎関節症になりやすいことなどから、早めの治療開始が推奨されます。
・前歯の叢生(そうせい)
最初に生え変わる前歯の永久歯が、出てきた段階ですでにガタガタしている場合、かなりのスペース不足があると考えられます。早めの治療開始で抜歯矯正を回避できる確率が上がります。
・開咬(かいこう)
上下の前歯が噛み合っていない状態です。舌の悪い癖や指吸いなどが原因となっていることが多く、治療時には癖の除去もあわせて行う必要があります。開咬は奥歯に負担がかかり奥歯を失うことも多いため、早めの治療開始が推奨されます。
子どもの歯並び「様子をみましょう」はいつまで?
子供の歯並びについて歯科で相談すると「様子をみましょう」と言われたことはありませんか?
では様子をみていると自然に改善するのでしょうか?
残念ながら、自然に改善することはほぼないと思っていただいた方がよいでしょう。
歯科の中でも歯列矯正は特殊な分野であるため、一般歯科のみ対応している歯科医院では、すべてが永久歯になってから矯正歯科に紹介というパターンも多いようです。
そのため乳歯がある間は「様子をみましょう」となるのかもしれません。
しかしあごの成長促進をはかる治療法の場合は、早く始めた方が将来的に抜歯矯正や手術矯正を避けられる可能性が高まります。
子供さんは日々成長しています。待っている間にできることが限られてしまいます。骨格から整える矯正治療は低年齢のうちから始めないと効果が出ません。
お子さんの歯並びが気になられたら、もし一般歯科で「様子をみましょう」と言われても、一度「矯正歯科」を受診されることをお勧めします。
上顎が自然に成長するのは10歳頃までです
まだ全部の歯が永久歯になっていない時に、見た目の歯並びが悪くなくても矯正が必要な場合もあります。
下のケースでは、9歳の時にはキレイに歯が並んでいましたが、実際は犬歯2本が出てくるスペースがありませんでした。
下のケースでは、上の前歯4本の永久歯が生えてきた時から少しガタガタしていたのを「様子をみて」いたら、
犬歯が出てくるとともにガタガタが悪化してしまいました。
10歳以降では拡大治療でのスペース確保が難しくなり、抜歯矯正になる可能性が高くなります。