根管治療
Root Canal Treatment
当院の根管治療は、すべての症例において、マイクロスコープ下でラバーダムを使用して行います。
※)資料の写真はすべて院長の担当、施術症例です。実際の治療では個人差があります。
根管治療とは?
歯の内部には神経の通っている空洞があります。この空洞(根管)の中の清掃をする治療を根管治療(専門的には歯内療法)といいます。
実際の施術手順は、次の通りです。
まず、歯の上の部分から根管の中に細い専用の器具を挿入し、根管の壁にこびりついた汚れ(細菌の塊)をかき取り消毒薬で洗い流す操作を繰り返します。歯の種類によっては根管が複数あり、すべての根管がきれいになるまで1回から数回程度の通院(根管洗浄)が必要となることが多いです。根管の中がきれいになったら、薬をすき間なくつめて(根管充填といいます)根管治療は終了となります。
根管治療 保険と自由診療(自費)の違い
日本の健康保険制度は、「必要最低限の治療」が全国どこでも受けられるという非常に優れた制度です。子供や高齢者には補助がある場合も多く、格安で治せるのは魅力です。
しかし歯にとって「最善の治療」が受けられるかというと、実際には厳しい現実があります。
なぜなら根管治療の成功率を上げるためには、CTやマイクロスコープなどの特殊な機器を使って、ラバーダムをかけて、1回あたりの治療時間を長くして治療回数を少なくする必要がありますが、これらは保険診療ではカバーできません。
一方、自費診療は特に制限がなく、歯にとって最善の方法を選択できます。また保険適用のない薬剤を使用することで抜髄や抜歯を回避できることもあります。費用はかかりますが、長い目でみると度重なる治療で歯を失うリスクは格段に減るといえます。
根管治療の種類
根管治療は状態によって4段階に分けられます。またその前段階として、神経を保存する治療方法を検討できる場合もあります。
⓪生活歯髄温存療法
①抜髄(ばつずい)
②感染根管治療
③再根管治療
④外科的歯内療法
⓪生活歯髄温存療法
虫歯が深くても歯髄炎を起こす前の状態であれば、歯髄を生きたまま保存する方法を選択できることがあります。
当院では保険適用がないものの、世界的には多くの良い結果が報告されているMTAを使用し、抜髄の回避をはかることを積極的に行っています。
ただ適応症は限られていること、施術後には年単位での長期的な観察が必要なこと、施術後に結果的に抜髄になってしまうこともあることなどを十分ご理解いただいた上で、処置を受けられることをお勧めしています。
①抜髄(ばつずい)
一般的に「神経を抜く」と言われる処置のことです。歯髄炎という神経の炎症が起こってしまうと、神経がもとの状態に自然回復することはないため、神経を取り除く必要があり、この治療のことを抜髄といいます。
症状としては、どこが痛いか分からないくらいの激痛、噛めないくらいの痛み、温かいものがしみる、痛み止めを飲むとましになるが薬が切れると痛いなどが挙げられます。
抜髄では、根管内はまだ細菌感染していないので、感染させないような工夫をして治療をすることが重要なポイントです。
②感染根管治療
抜髄が必要な歯を治療せずに放置したり、歯のヒビ、外傷などで気づかないうちに神経が死んでしまうと、神経の残骸が腐り顎の骨を溶かして細菌感染が広がります。レントゲンを撮ると根の先に黒い影が確認できることがほとんどです。このような状態になると、痛みや腫れなどの症状がなくても治療が必要になります。放置すると顎の骨がどんどん溶けて身体に炎症が回ることや、歯も抜歯になってしまうこともあります。
③再根管治療
以前に根管治療を受けた歯が、再度感染を起こし治療が必要になることがあります。原因は二次虫歯、根管の形状が複雑であること、歯のヒビ、以前の根管治療の精度が低いことなどが挙げられます。
根管治療の成功率は回数を重ねるごとに下がっていくので、何度も治療を繰り返さないよう最初に受ける根管治療の精度を上げることが重要です。また、根管治療後の被せ物もぴったりフィットしたものを入れることも大切です。
④外科的歯内療法
どんなに精密な治療を行っても、根管治療だけでは治らないことがあります。
そのような場合は、外科的な対応をすることもあります。方法は主に以下の2つです。
・歯根端切除術・・・歯ぐきを切開して、歯の外側からアプローチして感染している部分を歯根とともに取り去る方法です。
・意図的再植術・・・一度抜歯して口の外で感染部を除去し、もとの場所に戻す方法です。
これらはあくまでも根管治療を徹底的にやってもダメな場合に限られる方法です。また、根の形や歯の場所によっては適用できないことも多いのが現実です。
当院における根管治療の特徴
①根管治療から最終の被せ物を入れるまでの総合的な治療が可能です
根管治療をした歯を長持ちさせるためには、根管治療後に入れる土台や最終的な被せ物の形や材質の選択も重要です。
当院では、治療後の長期経過を数多くみてきた経験実績20年以上の歯科医師が担当しますので、ゴールをイメージした上で治療をスタートすることができます。
また残念ながら根管治療で歯を救うことができないと判断した場合、インプラントや自家歯牙移植など他の方法への変更もスムーズです。
②自由診療に特化した根管治療を提供します
歯をもたせるためにできることを全て行います
・診断時にはCTを撮影
・マイクロスコープの使用
・ラバーダムの使用
・柔らかい材質の器具を使用し、必要以上に歯を削らない
・MTAなど保険適用外の薬剤も状態に合わせて使用
必要最小限の通院回数になるよう予約時間は十分に確保し、落ち着いた空間でじっくり治療を受けていただけます。
③治療中の痛みの軽減に尽力します
治療中に痛みを感じてほしくないという思いから、当院では神経のない歯の根管治療でも基本的に麻酔を使用します。
理由は以下の通りです。
・神経のない歯でも、根管内に器具を入れると周囲の組織への刺激から痛みを感じることがある
・神経がないと思われる歯でも、神経の一部が残っていてその部分を触ると痛みを感じることがある
・ラバーダムをかける器具により、歯ぐきに痛みを感じることがある
また麻酔時の痛み軽減のため、以下の工夫をしています。
・表面麻酔をしっかり効かせてから注射針を刺入する
・極細の注射針を使用する
・麻酔が効くまで時間をおいてから施術を開始する
④治療中の再感染を徹底的に防ぎます
根管治療の成功率を上げるためには、施術で根管内をきれいにするだけでなく、根管外部からの細菌の侵入を防ぐ必要があります。
当院では外からの細菌侵入を防ぐため、以下のような工夫をしています。
・治療前に歯の表面の汚れを徹底的にきれいにしてから、被せや仮の蓋を外します。
・治療中は、ラバーダムをかけて唾液中の細菌の侵入を防ぎます。
・根管治療中の仮の蓋は2重にして、仮の蓋の脱落を防ぎます。
根管治療を成功に導くために必要な機器
①歯科用コーンビームCT
- 2次元のレントゲンでは分からない複雑な根の形を確認できる
- 複数の根がある時に見逃しが少ない
②マイクロスコープ
- 最大倍率20倍まで拡大することで、肉眼では見えない細かい
- 部分の感染物質を除去することができる
③ラバーダム
- 治療中の歯をゴム製のシートで隔離し、だ液の侵入を防ぐ
- ことによりだ液中の細菌による再感染のリスクを下げる
根管治療の治療例
根管治療 当院での流れ
※以下はよくあるパターンでの例となります。
歯の状態によっては追加の処置が必要になることや通院回数が増えることもあります。
① カウンセリング(無料)
根管治療に至るまでの経過や現在の症状、治療に対するご希望などをお聞きし、お口の中を確認いたします。
これらの情報の範囲で、大まかな治療予測をお伝えします。
②検査(別途費用必要)
CT等のレントゲンを撮影、その他必要な検査を行います。
③検査説明
治療回数の目安、予後の予測、費用などのご説明をいたします。
④初回根管治療
施術時間:1回あたり1時間半から2時間程度
歯の表面の洗浄と麻酔をした上で、虫歯治療、被せ物の除去、隔壁の作成等必要な処置を行ったのち、根管内にアプローチをします。
⑤根管洗浄または根管充填
施術時間:1回あたり1時間から1時間半程度
通院回数:平均1〜2回程度
根管内の汚れがきれいになり、症状がなくなるまで根管洗浄で通院していただきます。治癒の状態をみて良好と判断すれば根管充填を行います。
⑥歯の修復、補綴(ホテツ)
歯を補強するための土台を入れ、お口の中に見えている歯の部分に詰め物や被せ物を入れます。
土台は歯根破折のリスクを最小限にする素材のファイバーポストを多くの場合使用します。
ぴったり歯に適合した詰め物や被せ物を入れないと、再感染を起こし再発リスクが上がるため、このステップまできっちり完了させることが重要です。
⑦メインテナンス
お口の健康維持にはメインテナンスが重要です。当院では、歯石も着色も取れるクリーニングと検診を1年に2~4回程度受けられることをお勧めしています。また、根管治療の場合は長期的な経過観察が必要になります。術後3年間程度は、検診とあわせて年に1~2回程度、レントゲン撮影をし予後を判定していくことが大切です。
MTAについて
MTAによる穿孔修復の例
MTAはケイ酸三カルシウムなどを主成分とした歯科用セメントです。
穿孔修復、外科的歯内療法、覆髄、根管治療などに対しての有用性が海外でも多く報告されている材料です。
上手く利用することで、神経を抜かないといけないと言われた歯の抜髄回避や、抜歯回避が可能になることがあります。
根管治療でよくあるご質問
Q: 歯が痛くなる原因は何ですか?
A: 歯がしみるという感覚があるのは、歯の中に通っている神経(歯髄)が生きているからです。そして虫歯などが原因でこの神経が炎症を起こすと、激痛になることが多いです。一方、神経がない歯の痛みは歯を支えている周囲の組織が炎症して起こる痛みで、鈍痛であることが多いです。
Q: 現在症状はないのですが、治療は必要ですか?
A: 一度も根管治療をしたことがなく根管内が空洞になっている場合は、感染が周囲に広がらないよう早めの治療が必要です。過去に根管治療を受けて、根管充填がされている歯でレントゲン上で根の先に黒い影ができている場合は、総合的な判断で治療をするかどうかを担当医と相談して決められるとよいでしょう。
Q: 根管治療が必要なのはどのような状態ですか?
A: 以下のような状態が出ることが多いですが、疲れた時だけ症状が出たり無症状の場合もあります。
- 歯ぐきの腫れ
- 歯の揺れ
- 咬むと痛い
- 根の先の部分にレントゲンで黒い像がみとめられる
同じ場所の歯ぐきが何回も腫れる、咬むと痛いなど症状がある場合は、根管治療で改善する可能性があります。
ただし歯周病や歯の破折なども同じような症状が出るため、鑑別診断が必要です。
Q: 根管治療の成功率はどのくらいですか?
A: 歯医者で治した歯は完治したと思われるかもしれません。
しかし、実際は根管治療の成功率は100%ではないのです。
特に2回目以降の再根管治療の成功率は1回目に比べるとガクンと下がり、日本においては3~5割の成功率との報告があります。また、根管治療は回数を重ねるたびに成功率は下がっていきます。
以前に治した歯がまた腫れたり、痛くなったりした時は、再根管治療が必要な状態の可能性があります。
Q: 痛みに対する配慮はどのようなことを行っていますか?
A: 治療中に痛みを感じてほしくないという思いから、当院では神経のない歯の根管治療でも基本的に麻酔を使用します。詳しくは、上記の「当院における根管治療の特徴」をお読みください。
Q: 他院で治療途中でも相談・治療は可能ですか?
A: 可能です。今までの治療経過が分かる紹介状等をお持ちの場合は初回来院時にお持ちください。
Q: 抜歯になるのはどのような時ですか?
A: 以下のような状態が考えられます。
・歯根破折
歯が縦方向に割れている場合は、抜歯になる可能性が高いです。
横方向の場合は、割れている場所によっては抜歯せずに済む場合もあります。
・残存歯質が少なく補綴ができないケース
歯の健全な部分が歯ぐきの中に埋まっている部分にしかない場合や、薄くなっている場合は、被せ物を入れることができないため抜歯になります。
・外科的歯内療法での対応ができないケース
根管治療で根の先の感染が治らない場合は、外科的な方法に移行しますが、歯の場所や根の形によっては対応ができません。外科的対応ができない場合は抜歯になります。
初めて根管治療を受ける時は、慎重な選択が重要です
根管治療の成功率を高める努力をすることで、天然の歯を守る確率が上がります。特に初回の根管治療は慎重に受けられることをお勧めします。
しかし、根の形態によっては細菌感染を取り除くことができないこともあり、また薄くなった部分から歯が割れて抜歯になることもあります。
まずは根管治療に至らないよう、虫歯予防に取り組むことが重要です。